オーディオテクニカは限定ヘッドホンを多く発売していることで有名です。その多くは木のハウジングが特徴であるATH-Wシリーズですが、同社の密閉型ヘッドホンのスタンダードモデルであるアートモニターシリーズにも限定モデルが存在します。
オーディオテクニカのサイトによれば、
ATH-A100Ti、
ATH-A1000、
ATH-A900LTDの三点が限定生産として紹介されています。高価でアコースティックな楽曲の再生に適すると風評があったWシリーズに対して、ロックやテクノビートなどを楽しく再生できるとの評判と、やや抑えめ(それでも高価ですが……)の値段から若い世代を中心に人気を博しました。
私はATH-A100TiとATH-A1000を所有しておりましたが、先日ATH-A900LTDを購入したことと高価格ヘッドホンが欲しいという友人が現れたため、彼にATH-A1000をプレゼントする運びとなりました。
そこでその思い出を記録する意味も踏まえて、既に手に入らないものではありますがここにレビューをさせていただきたいと思います。
【使用環境】 ・256kbps MP3 (Lame Encode)
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m902(USB接続)
【比較対象】 ・
audio-technica ATH-A900LTD2005年のオーディオテクニカ限定モデルです。A1000と同じ密閉型シリーズのヘッドホンであり音の性質も概ねA1000に準じるといって良いでしょう。低音の量感が増しているところが特徴です。
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audio-technica ATH-AD2000オーディオテクニカの開放型ヘッドホンのフラグシップ機です。強烈なまでのアタック感による迫力あるサウンドが特徴です。
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Grado RS-1Gradoの公称最上位機種である開放型ヘッドホンです。濁りの少ない独特の響きと立体的な音場感が醸し出す臨場感が魅力です。
【感想】A1000のネット上での評価は大きく割れるようです。それも「名機」と「オーディオテクニカの名を失墜させた」と言う具合に極端に。私の評価は「もう手に入れることが難しい機種を手放す」と「ほぼ音の質が同じである後継機を購入した」という二つの行為の示すとおり「その音質には魅力を感じているが、機体そのものへの思い入れは強くはない」というところです。
・音質このヘッドホンに対する音質の表現はばらけますが、私の感想は「密閉型らしい響きと軽快なアタック感が特徴で、中高音にややフォーカスされている」というものになります。
基本的には密閉型らしい独特の残響が音の厚みを増していますが、それだけでは籠もった印象を与えてしまいます。そこでA1000は中高音域の音にフォーカスを当てることで例えばシンバルやハイハットなどの音をくっきりと浮き上がらせ心理的に明瞭な音作りをしています。また音の立ち上がり方が良いのでしょうか、アタック感が派手すぎずそれでいて明瞭であるため「奏でている感」がとても良く伝わってきます。
オーディオテクニカが作り続けてきた密閉型ヘッドホンの代表シリーズ「アートモニター」の頂点を飾る機種だけあって、そのバランス感覚は極めて秀逸です。密閉型ならではの響きが織りなす空気感とドライバが再現するアタック感が相まって独特のライブ感を与えてくれます。
惜しむらくはオーディオテクニカ製品の共通の性質である「頭にまとわりつくような定位」が出てしまっていることでしょうか。この音作りに対しては定位も広がりあるほうが望ましかったかも知れません。もちろん、この定位によってもたらされるヘッドホンならではの迫力はそれで味なのですが。
なお、このヘッドホンにはソースを選ぶという注意点があります。中高音域のフォーカスの当たり方がやや強いためにいわゆる「女性ボーカルのサ行が刺さる」ソースが非常に耳に障ってしまうのです。高音域が耳に痛いと感じた場合はプレイヤーのイコライザーを使用して12K〜14Kの帯域を落としてみてください。多少は緩和できると思います。
・デザイン オフィシャルサイトにある画像ですとやや明るいシルバーというイメージですが、実際はガンメタリックの若干入ったシルバーという感じになります。そしてアーム軸受けのベアリングおよびアームとドライバの接合部は鮮やかな青の部品を使いワンポイントとしています。
コードは布巻きになっています。AD2000もA900LTDもコードは高弾性エラストマーシースを採用していますが、やはり布巻きの方が趣味が良いと感じますね。
トータルとしては無難な仕上がりといえるでしょう。チタンの質感もあって所有する喜びは十分満たしてくれるものです。
・使いまわし コードは片出しで邪魔になりません。オーディオテクニカの特徴とも言えるウィングサポートも円熟の域に達しており調整なしで誰の頭にでもフィットし負荷を分散します。側圧もかなり弱くストレスのない装着が可能と言えるでしょう。ただ、ウリであったアーム軸受けのベアリングは効果が出ているかどうかはイマイチ不明です。A100Tiはボーリングなしですが、やはり快適な装着感を実現していましたので。この二機種を比較すると、むしろハウジングとアームの接続がが動くようになっているほうが効果が大きそうです。
・まとめオーディオテクニカは名機ATH-AD7とATH-AD2000の存在により開放型でも名を馳せていますが、その歴史は密閉型の雄としてのものでした。その技術は連綿と受け継がれてこのATH-A1000に注ぎ込まれています。
密閉型ならではの響きをいかにしてヘッドホンの魅力として昇華させるか。オーディオテクニカが2002年11月21日に発売したヘッドホンATH-A1000は、勢いのある音作りと響きを合わせて生み出した臨場感をもって一つの回答を示したといえるでしょう。
A1000の発売から3年後の2005年11月25日、新しいアートモニターシリーズのヘッドホンATH-A900LTDが発売されました。しかしA1000は未だアートモニターシリーズ最上位の地位を譲らずにいます。